近年、高度経済成長期に集中整備された社会基盤施設(インフラ)の一斉老朽化が社会問題となっています。
このうち、東北地方をはじめとする積雪寒冷地の道路構造物では、冬季に大量の凍結防止剤(塩)が散布されるため、
これによる劣化が顕在化しつつあります。
中でも道路橋の鉄筋コンクリート製(RC)床版では今後、凍結防止剤による劣化が最も深刻化すると言われています。
土木工学科コンクリート工学研究室では、この問題に対し、長年にわたり精力的な研究を続けてきました。
その結果、床版上面のコンクリートのち密性※がコンクリート内部への塩分の浸透を抑制し、
かつコンクリート中に適切な空気(エントレインドエアと呼ばれる独立気泡)を連行することにより、
優れた耐凍害性を示すことを明らかにしました。ち密性はコンクリートの材料や配合を工夫するだけでなく、
締固め※や養生※といったコンクリートを施工する際の工夫によっても改善することが可能です。
そこで、当研究室では、民間企業の力を借りて産学連携の研究体制により、健全(Health)で持続可能(Sustainability)な橋、
すなわち「ロハスの橋」を実現するためのプロジェクトを2014年からスタートさせました。
我が国で初めて、実際の橋と同じ構造を模擬した実物大の橋のモデルを工学部キャンパス内に再現し、研究を進めています。
※ち密性
コンクリートの組織が密実でしっかりしている事。その結果、コンクリートの耐久性上有害なCO2やNaCl(塩)といった物質の外部からの侵入を抑える。
※締固め
コンクリートを型枠に投入する打込みの際に振動させたり叩いたりし、コンクリートを型枠の隅々に行き渡らせるとともに、余計な空気を除去して密実にする事。
※養生
コンクリートが十分硬化するまでの期間、適切な温度と湿度を保ち、有害な作用からコンクリートを保護する事。